個人出版社の立ち上げについて

このページでは、個人出版社の立ち上げについて税務の観点から記載していきます。

※令和5年10月からインボイス制度が始まりました。これにより、かなり影響を受けることになったという出版社もあるようです。

個人事業としてスタートするか、会社としてスタートするか

個人出版社を立ち上げる際には、2つの方法がございます。一つ目は個人事業としてスタートする方法、二つ目は会社としてスタートする方法です。

今までは、個人事業としてスタートとして、売上が1000万円を超えたら会社へ切り替えるというのが王道のパターンでした。

理由は様々あったと存じますが、税金面から考えますと、売上が1000万円を超えると消費税の納税義務が出てくるのですが、それを回避するために、法人へ切り替えて、消費税の納税義務が始まるのを少し先延ばしにするという意図があったと存じます。

この辺りのことは、インボイス制度が始まったことにより、変化が出てきているようです。出版社立ち上げの段階で、インボイスの登録をして消費税の課税事業者というケースもありそうです。ただし、消費税の計算方法の中に、2割特例というものもありますので、そちらとの関係も気にしつつ、決めることになるでしょうか。

スタート時点から消費税の課税事業者なのであれば、個人事業から法人化ではなく、個人事業のまま、あるいは最初から法人でスタートという選択をするケースもでてくるかと思います。

個人事業と会社との違い:法務局への登記

個人事業の場合は、自分で本を作り始めれば、それでスタートです。スタートした後で税務署へ開業届や青色申告承認申請書などを提出することで、税務上も個人事業主として認識されます。

一方、会社の場合には、まず、法務局へ登録(=登記)が必要です。例えば、10月1日会社を作りたいということですと、事前に登記に必要な書類を作成して、必要な書類などを集めて、色々と準備した上で、当日、法務局へ申請して、処理されるという流れとなります。

法務局で処理されたら、今度は、税務署へ開業届や青色申告承認申請書などを提出し、そして銀行へ口座開設の手続きを行うというところまでが、一般的な流れだと存じます。

なお、実際の手続きは税務署へ行かなくても郵送や電子申請などで対応してもらえます。

登記はご自分でもできますが、後で修正が必要ということもあります。修正ということになりますと、またお金がかかりますので、登記前に一度、司法書士などに相談した方が無難だと存じます。

出版社の場合には比較的口座は作りやすいとは思いますが、会社の銀行口座開設に影響しますので、登記する際には会社の目的や会社の住所、資本金の額などは、きちんと考えて設計なさることをおすすめします。

個人事業と会社との違い:税金

個人事業と会社とでは、支払う税金も変わります。どちらが税金が安く済むのかは、どれくらいの売上なのか、どれくらいの利益なのかによっても変わってきますので、何ともいえません。

利益が出そうという場合には、会社には、会社特有の節税策と呼ばれているものがあります。それは①旅費日当の支給②社宅制度③役員報酬の支給の3つです。

もしも取材などで出張があるようでしたら、旅費日当を支給することを検討してみてください。賃貸に住んでいる場合には社宅化を検討してみてください。

最後に、役員報酬。個人事業の場合にはご自身の人件費は経費として認められませんが、会社の場合には経費として認められます。ただし、役員報酬の支給にはルールがありますので、勉強が必要となります。

ルール1:定期同額給与

定期同額給与とは、法人税法上のルールでして、役員報酬を利益調整のために使わせないためのルールのひとつです。予め決めておいた金額を毎月の役員報酬額とするならば、経費として認めますというものとなります。例えば、月20万円と決めたとします。決算月となり、利益が100万円くらい出ている場合には、役員報酬を例えば月50万円くらいに増額したくなるかもしれません。しかし、それは利益調整になるからダメですよ。月20万円のままにしておいてくださいねというのが定期同額給与となります。

「定期同額給与」以外にも認められている役員報酬の支給方法はあります。例えば「事前確定届出給与」というものです。これは予め税務署へこの日にこの金額払いますとと書類を出しておいて、その通りに支給すれば経費と認めますというものとなります。定期同額給与を毎月の給与とするならば事前確定届出給与はボーナスのようなイメージです。

ただし、「事前確定届出給与」は「定期同額給与」よりも難易度が上がりますので、事務作業や経営が得意な方向けの制度という印象があります。設立と同時に事前確定届出給与にチャレンジする方は少数派だと存じます。

ルール2:社会保険への加入

社会保険への加入は、税金の話ではありませんが、代表取締役へ役員報酬を支給すると強制的に加入しなければなりません。一昔前は、社会保険は加入せずに無視するという会社もあったかもしれません。しかし、今は入らないとしつこく連絡が来ますので、きちんと加入している会社が多いのではないでしょうか。加入の手続きは、社会保険労務士へ依頼することもできますが、ご自身でなさる方も多いです。

個人事業と会社との違い:決算期

個人事業の場合には、一律12月決算となります。12月末で一旦締めて、3月15日までに申告をする流れとなります。

一方、会社の場合には、ご自身で選ぶことができます。決算と繁忙期を重ならない方に設定する方もいます。特にこだわりがないという場合には、設立日の前月末を決算日とすることが多いです。これは消費税の免税期間をできるだけ長くとるためです。例えば10月5日設立ですと9月末を決算日とするということになります。

会社の場合には決算日で締めてその2か月後が申告と納税の期限となります。なお、事前に手続きをすることで申告期限を3か月に延長することも可能ですが、納税の期限は2か月のままですので、お気を付けください。

個人事業と会社との違い:名称

個人事業と会社とでは、出版社名も変わります。例えば、個人事業時代は〇〇出版社だったものが、会社になると株式会社〇〇出版社など、「株式会社」や「合同会社」などといったものが入ることとなります。

個人事業と会社との違い:廃業

事業を終わらせることを「廃業」と言ったりします。個人事業の場合、廃業するには、取引先と取引の清算を行うことで、廃業はできるでしょう。

しかし、会社の場合には、取引先と取引の清算をした上で、会社を閉じるという作業も必要をなります。ここでも法務局での登記が絡んでくるので、手間とお金がかかります。

印税等の支払いの際の源泉税の徴収

印税や原稿料などを支払うときに、源泉徴収をして支払うという話を聞いたことがあるかもしれません。前提として、これは所得税の問題でして、お金を受け取る側が、個人の場合に出てくる問題となります。お金を受け取る側が会社などの法人の場合には、源泉徴収は発生しません。

さて、ご自身が会社の場合、個人へ支払いがあるときは源泉徴収義務に注意してください。

例えば、印税や原稿料、デザイン料を支払う場合には、源泉徴収が必要となります。源泉徴収とは、お金を受け取る側の所得税を、支払う側が預かって税務署へ納めるという仕組みとなります。何故このようなことをしているかというと、税務署が所得税を取りっぱぐれないようにと作られているものです。

お金を受け取る側の税金だから、会社側は無視してもよいのではと思うかもしれませんが、源泉徴収義務は支払う側(会社側)にありますので、しっかりと徴収しないと、税務署にバレたときに重たいペナルティーがかかります。

またご自身が個人事業主として活動している場合にも、従業員などを雇っている場合には源泉徴収義務者となり、源泉徴収が必要となります。

ご自身が個人事業主として活動していて、従業員がいない場合には、源泉徴収はしなくてもよいということになっています。

支払調書や源泉徴収票の作成

印税や原稿料を支払った場合には、支払調書を作成する必要があるかもしれませんので、台帳を作成しておきましょう。

内容としては、相手の名前、支払日、本体価格、消費税、源泉税の額を記載しておき、12月を締めたら、1月から12月までの間で、受取者毎に集計して、支払調書の作成基準を超えている場合には作成するということになります。税務署へは、弁護士や税理士等に対する報酬、作家や画家に対する原稿料や画料、講演料等については、その年中の支払金額の合計額が5万円を超える場合、作成して提出することとなります。

注意点としては決算日に関係なく、1月から12月までを集計するという点です。

また、税務署への提出基準に達していなくても、全員へ送っているという出版社もあるようです。出版社によっては、作家さんたちが確定申告で使えるように、支払基準ではなく、発生基準で支払調書を作成して送っているというところもあるようです。

印税や原稿料を支払った場合には、過去7年の情報は保管しておいてください。作家さんが過去の確定申告をやりなおしたり、税務調査が入ったりしたときに、出版社側に情報提供の依頼がくるかもしれません。

給与を支払った場合には源泉徴収票の作成が必要となりますので、給与台帳や源泉徴収簿などを作成しておきましょう。

在庫に注意

出版業の場合には、在庫の管理に注意なさってください。

注意するポイントは、個人事業から法人へ切り替えたときの在庫の扱いと、毎年の決算前の在庫の整理となります。

新しいタイトルを作れば作るほど、在庫の管理は大変になっていきますので、早めにどのタイトルがどれくらい残っているのかを把握する方法を確立なさってください。

インボイス制度の影響

令和5年10月からインボイス制度が始まりました。

出版社はインボイス制度の影響を受けやすい業種だと存じます。

まとめ

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

このページでは、個人出版社の立ち上げについて税務の観点から記載しました。

出版社は、印税を支払ったときの源泉税の処理が大変だと思います。印税を管理する方法をいち早く確立なさってください。

 

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