作家さんや漫画家さん向け:個人事業税は、払うのか払わなくてよいのか問題について

このページでは、作家さんや漫画家さんに向けて、個人事業税を払うのか払わなくてよいのかについてご紹介していきます。

本当は払わなくてよいのに、払ってしまった場合には、都道府県税事務所へ連絡して、返金してもらいましょう。

個人事業税のポイント:払うのか、払わなくてよいのか

作家さんや漫画家さんにとって、気になる点は、自分が払うべき税金なのか、払わなくてよい税金なのかという点だと思います。

個人事業税は問題点の多い税金でして、一番の問題は、自分が払わなければいけない税金なのかどうかが分かりにくいという点だと思います。

賦課課税(ふかかぜい)なので、納付書が届かなければ払わなくて良い

まず、お伝えしたいのは、個人事業税は賦課課税(ふかかぜい)といって、役所側が税額を計算して、納付書が送られてくるタイプの税金となっています。

こういった税金の場合には、納付書が届かなければ、納税額が分かりませんので、納付書が届かない場合には払う必要はありません。

※賦課課税(ふかかぜい)は、役所側が税額を計算して納付書が送られてくるタイプの税金でして、例えば、個人事業税や住民税、固定資産税、自動車税などがあります。

一方、申告納税といって、自分で計算して納付するタイプの税金もあります。例えば、所得税や消費税などがあります。

何故、納付書が届かないのか

個人事業をしているのに、個人事業税の納付書が届かなくて、「変だな、このまま払わなくてよいのかな」と不安に思う方もいると思います。

まず、利益が年間で290万円を超えている方が対象となります。もしも、あなたの利益(売上から原価と経費を引いたもの)が290万円よりも少なければ個人事業税は発生しませんので納付書は届きません。

また、個人事業税は、個人事業税の対象となっている事業を行っている方だけが払うものとなります。

どんな事業が対象かは「法定業種」と検索してみると一覧がでてくると思いますので、そちらを参照ください。しかし、法定業種の一覧を見ても、あなたの仕事が当てはまるかどうかは、なかなか分かりにくいと思います。

作家や漫画家は、個人事業税の対象なのか

では、作家さんや漫画家さんが、個人事業税の対象なのか知る方法はないのでしょうか。

「法定業種」と検索すると、福井県のサイトで「個人事業税 業種の認定基準について」というものがあると思います。これは福井県では、こういう基準で判断していますというものを公表してくれているものとなります。

第16 出版業のところに、「文書、図画そのものを創作する文筆家、画家、漫画家等の著作権の対価(印税等)は法定事業に含まれませんが、自主作成した同人誌や自費出版した書籍の出版については、出版業に該当します。」(引用:福井県「個人事業税 業種の認定基準について」より)とあります。

印税や原稿料などの著作権使用料の対価は、個人事業税の対象外だから課税されないけれども、同人誌の出版は、法定業種である出版業に該当するので課税対象といったことが書かれていると思います。

売上が印税や原稿料などの著作権使用料の対価だけという方の場合には、個人事業税は払う必要ないと考えてよいと思います。

都道府県が管理しているため、地域によって基準が異なることもある

上記に「福井県ではこういう基準で判断しています」と書きました。というのも、個人事業税は、国ではなく、都道府県が管理している税金であるため、お住まいの地域によって基準が異なっていることがあります。

ですから、福井県の認定基準は福井県だけで使っているルールとなります。極端な話、同じ仕事をしていても、福井では個人事業税払わなければ、いけないけど、東京では払わなくてよいということもあり得ます。

とは言え、筆者の経験上、ここ数年は、作家さん、漫画家さんについては、どこの都道府県もほとんど同じ基準で判断されているように感じています。

印税収入と同人誌収入がある場合

印税や原稿料などの著作権使用料の収入と、同人誌の売上もあるという方もいると思います。そういった場合には、同人誌の売上に対応する部分だけが個人事業税の課税対象となります。

こういった場合、都道府県税側から「売上の内容を教えてください」とか「収入(売上)の比で按分するので、売上の内訳を教えてください」といった書類が届くと思います。

同人誌には印刷費がかかっていると思いますので、売上だけなく、対応する印刷費もしっかりと記載したほうがよいでしょう。例えば、「同人誌の売上は400万円ですが、原価の100万円は全て同人誌の印刷費です」など、備考欄や余白などに書いておいた方がよいと思います。

売上の比で原価や経費を按分されると、個人事業税の税額が多くなってしまうことがあります。

原価は同人誌に紐づいていること、著作権使用料の収入には原価はないことをアピールしないと、都道府県税の職員には伝わりません。単に売上の割合で、所得金額(利益)を按分して、課税してきたりします。

こういった書類が届いたときは、税理士がいる方は税理士に一旦、相談なさってください。というのも、ご自身で回答して、本来払う必要がない税額を払っている方を見かけることがあるからです。

 

「漫画家の個人事業税:印税収入と同人誌収入がある場合(補足)」はこちらから

税額のチェック方法

個人事業税は都道府県税側が計算して、納付額を知らせてくれる税金ですが、それが合っているのか不安に思う方もいると思います。

チェック方法としては、納付書が届いたら、5%で割って、290万円を足すことで、いくらを基準に計算したかを逆算で求めているという方法もあります。

例えば、売上800万円、原価100万円、経費110万円だったとします。その場合の個人事業税は、800△100△110=590万円が利益となり、そこから290万円をひいたものに5%を掛けたものが、税額となります。この例で行くと、15万円となります。(確定申告のときに青色申告をしていて、65万円控除使っていますという方もいるとは思いますが、個人事業税の計算では65万円控除は無視して計算します。)

反対に、15万円の納付書が届いたら、逆算して590万円が利益として計算したということが分かります。

290万円って何と思った方もいるかもしれません。290万円というのは事業主控除といって、全員から引いてくれるものとなります。ですから、逆算するときは290万円を足すことで、もとの利益がいくらくらいで計算されていたのかを求めることができます。

納税通知書がある場合には、納税通知書に課税標準額が書いてあると思います。その課税標準額というのが利益のことです。

間違えて払ってしまった

納付書が届いたので、とりあえず払ったけれども、実は払う必要がなかったのではないかと気づいたときには、返してもらえることもありますので、まずは落ち着いてください。

確定申告の控えや納付書の控えなど、使えそうな書類を準備して、都道府県税事務所へ電話しましょう。「納付書届いたので、個人事業税を払ったのですが、そもそも、なんで課税されたのですか?私、作家業しているのですけれども、印税は課税されないって聞いたのですが、、、。」など、問い合わせてみましょう。

確定申告を税理士へ頼んだ方は、税理士へ相談してみるのもよいと思います。

うまくいかない

話が通じなかったり、交渉がうまくいかないこともあるかもしれません。個人事業税を取りたいだけで、結論ありきの乱暴な対応なする職員もいます。

もしも都道府県税の職員の対応がおかしいなと思ったら、その上司などに電話をかわってもらい、「一方的な言い分を押し付けてくるだけで、こちらの話を聞いてもらえないのですが、どうなっているのでしょうか」などと話してみましょう。

都道府県税の職員の中には、そもそも個人事業税を理解していないと思われる人もいます。

「課税の誤り」について

「課税の誤り」と検索すると、自治体からのお詫び文章が沢山でてくると思います。自治体が間違えることは珍しいことではありません。自信をもって交渉しましょう。

「個人の事業内容に関する回答書」や「個人事業税収入等明細書」などの書類が届いたり、電話で問い合わせがあった

都道府県税の職員から仕事の内容についての電話があったり、書類が届いたりすることがあります。

もしも電話で問い合わせがあった場合には、還付金詐欺などの可能性もありますので、即答はせずに、部署と名前をメモした上で、「外出先なので、あとで掛けなおします」などと対応しましょう。あとは電話番号を検索したりして、都道府県税事務所へ電話して、本物かどうかを確認なさってください。

東京都の場合には、「主税局総務部総務課相談広報班」に電話で確認すると対応してくれるそうです。(参照:東京都主税局「にせ都税メール・電話にご注意ください!」より)

「個人の事業内容に関する回答書」や「個人事業税収入等明細書」などのいわゆるお尋ね書類が届くことがあります。これは、課税対象かどうか判断するための判断材料を提供してくださいというものとなります。

こういったお尋ね書類は、そもそも書類の内容が間違っていることもあって、「送られてきた書類、おかしなところありますけれども」といったやり取りからしなければならないときもあります。

「お仕事の内容についてのお尋ね」が来た(個人事業税)も参考になさってください。

個人事業税は、問題が多い税金

作家さんや漫画家さんにとって、個人事業税は全くノータッチで、問い合わせが来たこともないし、払ったこともないという方もいると思います。

その一方、毎年問い合わせが来たりして、めんどくさいと感じている方もいると思います。

都道府県税の職員は、知識や能力にかなりの差があって、特に変な職員にあたってしまったときは、ストレスが大きく大変だと思います。

都道府県税側の対応は間違っていることもありますので、「おかしいのではないか」、「間違っているのではないか」と思ったら、都道府県税事務所へ電話して問い合わせた方がよいと思います。