漫画家の個人事業税:印税収入と同人誌収入がある場合(補足)

このページを読む前に、「作家さんや漫画家さん向け:個人事業税は、払うのか払わなくてよいのか問題について」をご覧いただくと、話の前提が分かると存じます。

印税や原稿料は個人事業税なしだが、同人誌の売上は個人事業税がかかる

漫画家の個人事業税でややこしい点は、印税や原稿料は、個人事業税はかからないが、同人誌の売上は個人事業税がかかるという点です。

個人事業税は都道府県税事務所が税額を計算して納付書を送ってきますが、印税と同人誌の収入がある場合には、その内訳が分からないと都道府県税事務所としても、計算ができません。

そこで、「個人事業税収入等明細書」などを送りつけてきて、内訳を把握しようとするのです。

問題は所得の分け方、按分の方法

内訳を把握するために、「個人事業税収入等明細書」などを送ってくるのは、仕方がないと思います。記入して、回答してあげましょう。

でも、おかしいのは、所得金額を印税収入と同人誌収入の売上の比率で分けようとする点です。

印税収入と同人誌収入との売上の比で所得金額を分けられると、税額が大きくなってしまい、漫画家側が損することがあります。

具体的な数字で試算してみましょう。

例えば、印税収入が1000万円、同人誌収入1000万円だとします。同人誌には印刷費がかかりますので、その印刷費が300万円だとします。その他、家賃など、印税収入にも同人誌収入にも共通して使用した経費が100万円あったとします。

1000万円+1000万円=2000万円が売上、印刷費300万円が原価、100万円が経費、所得金額は1600万円とします。

では、この1600万円の所得金額をどうやって分けるかが問題です。

都道府県税事務所などに計算を任せると、「売上の比で分けますね」と言って、半分ずつ、印税収入に対応する所得が800万円、同人誌収入に対応する所得が800万円として、個人事業税を計算して、255,000円の納付書をおくってきたりするでしょう。(課税対象の所得800万円△事業主控除290万円=510万円、510万円に税率5%を掛ける)

しかし、同人誌には印刷費がかかっていますので、売上の比で分けてしまったら、おかしいですよね。

原価を反映して、印税1000に対して同人誌700として按分するのが、合理的な分け方だと存じます。

この方法ですと、印税収入に対応する所得が941万円、同人誌収入に対応する所得が659万円として、個人事業税を計算して、184,500円が税額となります。(課税対象の所得659万円△事業主控除290万円=369万円、369万円に税率5%を掛ける)

売上比で分けた場合は約25万円、原価を反映させて計算した場合には約18万円となり、売上比で分けると7万円も税額が高くなります。

  印税収入 同人誌収入 合計
売上 1000 1000 2000
原価   △300 △300
経費     △100
所得     1600

 

  印税収入 同人誌収入 税額(5%)
売上比で按分した所得 800 800 →255,000円
原価を反映した所得 941 659 →184,500円

※所得をどう分けるかによって個人事業税の税額が変わってくる

書類に記載欄はないこともある

上記の例で、印税と同人誌収入がある場合には、所得をどう分けるかによって個人事業税の税額が変わってくることは理解していただけたかと思います。

売上比で分けるよりも、売上から原価を引いた後の金額の比率で分けた方が、事業の実態と合っていて合理的です。

さて、ではこのことをどうやって都道府県税事務所に伝えましょうか。

都道府県税事務所から送られてきた「個人事業税収入等明細書」にはそういったことを記載する欄がないこともあります。

その場合には、備考欄や空欄に「同人誌収入には原価(印刷費)300万円有」と記載しましょう。

説明方法は自由ですので、別紙参照と記載した上で、別の紙で説明してもよいと思います。

「同人誌収入には印刷費300万円がかかっていますので、所得は売上の比ではなく、売上から原価を引いた後の金額の比率で分けるのが事業の実態と合っており合理的な分け方です。」といったこと記載して説明しましょう。

同人誌を作成するためには、費用がかかっていることを理解できない担当者もいるようですので、同人誌というのは、薄い本であって、作成するために印刷費がかかること。印刷費は、売上と明確に紐づいている原価であることを説明しましょう。

話の通じない担当者もいる

都道府県税事務所の担当者の中には、納税者の事業内容を理解しようとする力が足りていない人もいますし、一般的な知識が足りていない人もいますし、単に勉強不足・能力不足の人もいます。

最近はまともな人も増えてきましたが、変な担当者に当たったら、「上席の方に変わってください」と言って、上司に変わってもらいましょう。

まとめ

このページでは、印税収入と同人誌収入がある場合の個人事業税について記載しました。印刷費などの同人誌と直接関係のある経費は原価で処理しておくと、説明しやすいと存じます。