このページでは、レストランやカフェの社会保険料について考えていきたいと存じます。
社会保険とは、いわゆる健康保険と年金のことだけを指すこともあれば、労災保険や雇用保険も含めている場合もあります。このページでは、健康保険と年金のことだけでなく、労災保険や雇用保険のことも含めて記載しております。
レストランやカフェを個人で経営している場合には、他の業種ですと5名雇うと出てくることもある社会保険の強制加入問題がないという点と、健康保険組合に加入することで保険料を安くできることもあるという点が特徴的だと思います。
なお、このページでは、レストランやカフェを経営している側、つまり、お店側からの視点で記載しています。
※このページで記載している数字は目安となります。正確な数字はご自身で計算なさってください。
まず、社会保険とは何かについて記載しておきます。
お一人で、なさっている場合には、「健康保険料」と「国民年金」のことを指していることが多いと存じます。
健康保険料は、自治体の国民健康保険に加入していたり、東食国保などの健康保険組合に加入していたりするかと存じます。
自治体の国民健康保険は、所得(=利益)に応じて保険料が決まるため、利益があまり出ていないという場合には、自治体の国民健康保険の方が保険料が安くなるかと思います。
東食国保は所得ではなく、頭数で保険料が決まりますので、単身者の場合で利益が出ていますというケースでは、東食国保などの健康保険組合に加入した方が、保険料は安くなるかと思います。東食国保は世帯で一人のみ加入ですと26万円くらいです。世帯で二人加入ですと36万円くらいとなります。(40歳未満の場合)
健康保険組合の保険料の決め方は、健康保険組合によって異なりますが、東食国保以外の健康保険組合の場合、所得に応じて保険料が決まるものもあれば、頭数で保険料が決まるものもあるかと思います。単身者の場合、健康保険組合に加入した方が保険料が安くなることが多いようです。
単身者ではなく、いわゆる扶養家族が沢山いる場合には、よく検討なさってください。
国民年金は毎年、多少変わりますが、一律で保険料が決まっています。現在の保険料は月額16,610円とのことです。(21.4現在、日本年金機構の公式サイトより)
お一人で切り盛りをしていて、たまにアルバイト・パートの方に手伝ってもらっているという場合には、「①一人で切り盛りしている場合」の他に、労働保険料(労災保険)の支払いが出てきます。
労災保険は、アルバイトが一人でも加入が必要ですし、週3時間でも加入が必要です。労災保険は全額事業主負担、つまり、雇う側が負担します。
労災保険料率は、3/1000(令和2年、飲食店)とのことです。(厚生労働省パンフレットより)
時給1,100円で週3時間の場合、だいたい年500円程度になってくると思います。
労災保険の範囲には、業務中の事故だけでなく、通勤中の事故も含まれています。自転車通勤中の事故、配達中の事故、お店の中での火傷など様々なものが対象となっております。
労災保険の加入手続きは、外部に依頼することもできますが、ご自身でなさっている方が多い印象を受けています。
アルバイトやパートの方に定期的に手伝ってもらっているという場合には、「①一人で切り盛りしている場合」と「②たまにアルバイトに手伝ってもらっている場合」に加えて労働保険料(雇用保険)の支払いが出てきます。
雇用保険は、
・1週間の所定労働時間が20時間以上
・31日以上継続して雇用される見込みがある
の両方の要件を満たした労働者を雇う場合に、加入義務が生じます。
「31日以上」という部分、昔は、「6か月以上」だったようですが、平成22年4月から変更されたようです。
雇用保険料率は、全部で9/1000。そのうち、6/1000を事業主(雇う側)が負担して、3/1000が本人負担、つまり、働いた方の給与から引くことになります。
時給1,100円で週20時間の場合、年間で、労災保険料が3,200円、雇用保険料の事業主負担が6,300円、雇用保険料の本人負担3,200円くらいになってくると思います。
通勤費なども影響するのですが、週20時間の方を雇うと、事業主負担はだいたい1万円くらいだと思います。(時給1,100円の場合)
雇用保険の加入手続きも、外部に依頼することもできますが、ご自身でなさっている方が多い印象を受けています。
個人事業の頃は、ご自身への給料は経費にできませんでしたが、会社にした場合、社長自身へ給与を払うことができます。
社長ご自身へ給与を払うといわゆる社会保険の加入義務が出てきます。ここでいう社会保険とは、健康保険と厚生年金のことを指します。
その他、フルタイムに近い形で働いてもらっている方がいる場合には、その方も加入対象となるかもしれません。
厚生労働省の公式サイトにも、「パート、アルバイトでも、1日または1週間の労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、通常の労働者の分の4分の3以上あれば加入させる必要があります」とあります。
社会保険料(健康保険と厚生年金)は、原則、事業主と労働者が折半で負担することになりますので、社会保険に加入すると、事業主負担の負担が一気に増えます。
社会保険に加入する場合、ほとんどの会社が協会けんぽというものに加入するのですが、そちらですと、時給1,100円で週40時間のケースですと、年間で、健康保険と厚生年金の事業主負担が30万円くらいはかかると思います。本人負担もだいたい同じ額となります。
社会保険の加入手続きは、一人会社であれば、ご自身でなさっている社長さんもいますが、従業員がいる場合などは社労士さんへ依頼する方も多い印象を受けています。社労士さんへ頼むと、労災保険や雇用保険などや給与計算なども対応してくれますので、予算に余裕があるようでしたら、労務関係を全部社労士さんへ依頼するということもありだと存じます。
「④会社にした場合」で時給1,100円で週40時間の場合、年間で、事業主負担が30万円くらいかかるとお伝えしました。
これを何とか安くする方法はないのかと思う方もいるかもしれません。
その方法の一つとして、健康保険組合に加入するという方法も考えられます。「④会社にした場合」での試算は、協会けんぽというものに加入した場合の数字でした。協会けんぽの他に入ることができる健康保険組合があれば、健康保険料が変わってきます。
レストランやカフェの場合、地域によっては健康保険組合があるようです。例えば東京ですと、いわゆる東食国保などがあります。
東食国保は、加入者の数で健康保険料が決まります。事業主か従業員かでも保険料が変わるようです。色々とシミュレーションしてみて、安くなりそうでしたら、加入を検討してみてはいかがでしょうか。ただし、東食国保は、会社化した後では加入できないようでして、個人事業時代に加入するなどコツがあるようです。
また、東食国保の健康保険料は全額本人負担にすることもできますし、事業主が半分負担することができるということになっているようです。つまり、全額本人負担にすれば、その分、会社の負担は少なくなるということになります。
この辺りのことも社労士さんによっては、相談にのってくれるようです。社会保険も奥が深いなと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。このページでは、レストランやカフェの社会保険料について記載しました。
従業員などの社会保険料は給与から引くこともありますが、そのときに源泉税という税金の計算にも影響することがあります。雇用保険料の徴収し忘れなどで源泉税も動くということもありますので、従業員の人数が増えた場合などの給与計算は、落ち着いて計算なさってください。給与計算は外注するという方法もひとつだと存じます。
最後に宣伝です。
↓↓
【宣伝】当税理士事務所「創栄共同事務所」では、レストランオーナーの方やカフェオーナーの方からの確定申告のご依頼を承っております。渋谷や目黒だけでなく、山梨、長野などからのご依頼にも対応しております。お気軽にお声がけください。(会社にした場合の会社の決算・確定申告のご依頼にも対応しております。)
お一人で切り盛りしている方から、複数店舗の会社まで様々な規模のレストラン・カフェに対応しております。