インボイス制度に伴う振込手数料の支払者負担について

2023年10月からインボイス制度が始まりました。それに伴い、「振込手数料などは支払者負担でお願いします」という会社が増えてきているようです。

何故、突然、振込手数料を負担してと言ってきたのか

なんで、このタイミングで、「振込手数料を負担して」と言ってきたのでしょうか。

これはおそらく、今までも手数料は支払者に負担して欲しかったけど、それを伝えるきっかけがなくて、インボイス制度で処理方法が変わるのを機に変更のお願いを伝えたということだと想像します。

インボイス制度での処理方法は2つある(売り手負担の場合)

インボイス制度のもとでは、売り手(入金を受け取る側)が負担した場合の振込手数料の処理方法は2つあります。

一つ目は、売上値引で処理するという方法です。つまり、売上の減額。売上を減らす処理をした場合には、税込価格が1万円以下なら、インボイスの発行免除ということになっています。

しかし、売上が減ってしまうのは、ちょっと違うよねと思う方も多いのではないでしょうか。

もう一つは、支払手数料として処理する方法です。この方法は、今まで行ってきた方法だと思います。この場合、金融機関や取引先からの支払手数料に係るインボイスが必要ということになっています。

上記二つの合わせ技で、勘定科目は支払手数料として処理して、消費税の処理は売上値引で処理という方法も考えられます。

(参考:財務省「インボイス制度の負担軽減措置のよくある質問とその回答」問16~18

民法では支払者負担が原則ということになっている

なお、法律面では、民法の規定により、振込手数料は支払者が負担するのが原則ということにはなっているようです。

交渉の余地はあるのか?

取引先に処理方法がいくつかあることを話しつつ、「手数料分のインボイス発行しますので。」といったかたちで交渉する余地はあるかもしれません。

しかし、どんな処理方法にするかは取引先が決めることですし、「一律で対応することに決めました」とか言われてしまうと、従うしかないようにも思います。

まとめ

このページでは、「インボイス制度に伴う振込手数料の支払者負担」について記載しました。分からないことがありましたら、顧問税理士や税務署へご相談ください。

銀行手数料のインボイスについて

補足として、銀行手数料のインボイスについて、まとめておきましょう。

・ATMや両替機による取引は、インボイス不要、(帳簿にATM等による取引である旨と、ATM等の所在地(市区町村名や支店名)の記載が必要)

・ネットバンクや窓口での取引は、銀行側が発行するインボイスを保存する。

ということになっています。ネットバンクのインボイスは、自分でダウンロードすることが必要なケースも多いと思いますので、忘れずにダウンロードなさってください。

ATMや両替機による取引にインボイスがいらない理由は、適格請求書発行事業者が行う事業の性質上、適格請求書を交付することが困難な取引に挙げられている3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等」に該当するために、適格請求書の交付義務が免除されているからです。

少額特例

売上が1億円以下など要件にあてはまる場合には、規模の小さい事業者向けの救済策があります。それは税込1万円未満の取引はインボイス不要というものです。

しかし、一回の支払いの合計額が1万円未満という点に注意が必要です。また令和11年9⽉30⽇までという期限付きのルールとなります。