作家・漫画家さん向け:平均課税のパターン

このページでは作家さんや漫画家さんに向けて、平均課税について、どんなときに使えそうか、どれくらい税額が分かるのかを、具体的な数字で試算してみようと思います。

話をシンプルにするために、経費は0円、復興税や源泉税は無視して計算していきます。

前提:平均課税の計算では3年分の数字を使う

まず、平均課税の前提として、3年分の数字を使います。

1年分の数字だけでは、計算できませんので、昔の資料を引っ張り出してきてください。

なお、平均課税の対象となるのは、印税や原稿料、著作権使用料といったものですので、それ以外にも収入があるという方は、対象となる部分だけを集計する必要があります。

ケース1:右肩上がりタイプ

ここ3年、毎年、売上が増えていますという方は、平均課税を使える可能性が高いですので、確定申告書を提出する前に、平均課税が使えるかどうか検討してください。

例えば、下記のパターンです。

前々年(2年前)の売上 0円
前年(去年)の売上 1,000,000円
当年(申告する年・今年)の売上 10,000,000円

売上が1000万円あると、所得税額は、平均課税を使わない場合、だいたい160万円くらいとなります。

一方、上記のパターンで平均課税を適用すると 50万円弱くらいになります。

なぜ、こんなに変わるのかというと、所得税は収入が多いと税率が高くなるという仕組みとなっており、1000万円の税率は33%となります。

ただし、1000万円の全体に対して33%の税率で課税される訳ではなく、195万円までは5%、そこから330万円までは10%といったかたちで段階的に上がっていきます。

よって、1000万円だとだいたい160万円くらいとなります。(繰り返しになりますが、経費は0円、復興税や源泉税は無視しています。

 

そして、平均課税を適用すると、今年の売上だけで税率を決めるのではなく、去年や2年前の売上も加味して、税率を算出してくれるという制度でして、今年は売上大きかったけれども、去年や2年前はほとんどなかったという場合には、かなり低い税率となります。

上記の例でいくと5%となります。

もちろん、平均課税で5%課税となるのは、レアケースといいますか、2年前や去年の売り上げがほとんどなかった場合ですので、平均課税=税率が5%になるというものではありません。

 

ケース2:右肩上がりタイプ(去年も今年も多い)

去年の売り上げが多かったから、今年は使えないかというとそういうものでもありません。

例えば、下記のパターンです。

前々年(2年前)の売上 0円
前年(去年)の売上 10,000,000円
当年(申告する年・今年)の売上 30,000,000円

売上が3000万円あると、平均課税を使わない場合には、所得税はだいたい920万円くらいです。

一方、上記のパターンで平均課税を適用すると 520万円くらいになります。

税率で考えると、3000万円の場合には40%。

くり返しになりますが、3000万円の全体に対して40%の税率で課税される訳ではなく、195万円までは5%、そこから330万円までは10%といったかたちで段階的に上がっていきます。

よって、3000万円だと、だいたい920万円くらいとなります。(繰り返しになりますが、経費は0円、復興税や源泉税は無視しています。

それが上記の例でいくと平均課税と適用すると税率が17%になりました。

上記の例ですと、税額で400万円くらい変わっています。

平均課税を使うとかなり税額が減ることがあります。

平均課税を使えそうだなと思ったら、是非、使ってくださいね。

ケース3:デコボコタイプ

ケース2のパターンで、前々年と前年の数字が入れ替わっても、結果は同じです。

例えば、下記のパターンです。

前々年(2年前)の売上 10,000,000円
前年(去年)の売上 0円
当年(申告する年・今年)の売上 30,000,000円

上記のパターンは、ケース2と同じ税額となります。

売上が3000万円あると所得税はだいたい920万円くらいで、上記のパターンで平均課税を適用すると 520万円くらいになります。

 

なぜならば、前々年と前年の売り上げは、平均課税の計算の過程で、足してから2で割りますので、売上が入れ替わっても結果は、変わりません。

 

仮に、前々年と前年が500万円ずつでも結果は同じとなります。

前々年(2年前)の売上 5,000,000円
前年(去年)の売上 5,000,000
当年(申告する年・今年)の売上 30,000,000円

お気づきの方もいると思いますが、前々年350万円で前年650万円でも結果は変わりません。

前々年(2年前)の売上 3,500,000円
前年(去年)の売上 6,500,000
当年(申告する年・今年)の売上 30,000,000円

平均課税は計算の過程で、前々年と前年の数字の平均を使いますので、前々年と前年の合計値が同じ場合には、その内訳がどうであれ、結果は同じとなります。

ケース4:売上5000万円なら(パターン1)

では、売上が5000万円の場合はどうでしょうか。

例えば、下記パターンです。

前々年(2年前)の売上 20,000,000円
前年(去年)の売上 10,000,000
当年(申告する年・今年)の売上 50,000,000円

売上が5000万円あると、平均課税を使わない場合には所得税はだいたい1770万円くらいです。

一方、上記のパターンで平均課税を適用すると 1350万円くらいになります。

税率で考えると、5000万円の場合には45%。

何度も繰り返し書きますが、5000万円の全体に対して45%の税率で課税される訳ではなく、195万円までは5%、そこから330万円までは10%といったかたちで段階的に上がっていきます。

よって、5000万円だと、だいたい1770万円くらいとなります。(繰り返しになりますが、経費は0円、復興税や源泉税は無視しています。

それが上記の例でいくと平均課税と適用すると税率が27%になりました。

上記の例ですと、税額で400万円くらい変わっています。

売上が5000万円もあると、税額が大きすぎて、400万円減ったところで、効果は感じにくいかもしれません。

しかし、冷静に考えてみてください。400万円って、かなりの金額ですよ。

平均課税を使えそうなら、使った方が良いのではないかと思います。

ケース5:売上5000万円なら(パターン2)

では、下記パターンはどうでしょうか。

前々年(2年前)の売上 10,000,000円
前年(去年)の売上 30,000,000
当年(申告する年・今年)の売上 50,000,000円

前に述べた通り、売上が5000万円あると、所得税はだいたい1770万円くらいです。

さて、上記のパターンで平均課税を適用すると 1450万円くらいになり、税率が29%になりました。

上記の例ですと、税額で300万円くらい変わっています。

売上が5000万円を超えてくると、法人化(会社化)の話も出てくるかもしれません。5000万円の売上が毎年続くようでしたら、個人事業から会社へした方が税金面ではよいのかもしれません。

会社にした方が良いかは、今後の売り上げの見込みやご本人の意向や性格などにもよって変わってくるかと存じます。

 

平均課税を適用し忘れた

筆者は税理士でして、平均課税が使えたのに使っていない申告書を割とよく見かけます。

ご自身で申告書を作成した場合だけなく、税理士へ依頼したのに適用をしていないケースもあります。

もったいないなと思います。

平均課税を適用し忘れた場合には、後からでも適用できることがあります。

弊税理士事務所でもご相談を承っておりますので、お気軽にお声がけください。

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