大家さん向け:インボイス制度への対応について

このページでは、大家さんに向けてインボイス制度への対応について記載していきます。

インボイス制度とは何か?

インボイス制度とは、最終的には消費税の話です。

物件を借りている側の立場から考えるとイメージしやすいかもしれません。

ある会社(A社とします。)が月10万円のオフィスを借りていたとします。オフィスの賃貸は消費税の課税取引ですので、月10万円+消費税相当額1万円の合計11万円支払うことになります。

インボイス制度導入前は、消費税相当額1万円がA社にとって消費税計算上の経費となっていました。しかし、インボイス制度導入後は、貸主が適格請求書発行事業者(=インボイス制度の登録済の事業者のこと)の場合には経費になるけれども、貸主が適格請求書発行事業者ではない場合には、経費にならないという方向になっていきます。

つまり、不動産を借りる側の立場に立つと、「大家さんが適格請求書発行事業者の物件の方が経費にできるからいいよね」と考えるかもしれませんし、貸主が適格請求書発行事業者ではない物件の場合には、「経費にならないのであれば、消費税相当額払わなくていいよね」と思うかもしれません。

「適格請求書発行事業者登録番号の通知のお願い」が届いた

借主さんなどから「適格請求書発行事業者登録番号の通知のお願い」が届いた大家さんもいるかもしれません。

適格請求書発行事業者登録番号というのはインボイス制度で使う管理番号のことです。

これは、借主さんが、外注先などの支払先にインボイスの登録状況を把握するために送っている通知となります。

借主さん側も、インボイスが始まるとどれくらい影響が出るのかといった影響額を把握しなければなりませんし、支払先の登録番号を管理システムに入力するなどの事務的な準備をする必要があります。

インボイス制度への対応が必要な大家さんとは

すべての大家さんがインボイス制度への対応が必要なわけではありません。

インボイス制度への対応が必要な大家さんは、事務所や店舗などの物件を貸し出している大家さんとなります。アパートやマンションを住宅用や社宅用として貸し出している場合には消費税はかからないので、インボイスへの対応は必要ないでしょう。

まず、すでに課税事業者だという大家さんの場合は、インボイスの発行事業者の登録をしましょう。登録方法は簡単で、「適格請求書発行事業者の登録申請書」を税務署(インボイス登録センター)へ提出するだけです。令和5年9月末までに登録すると令和5年10月のインボイス制度のスタートに間に合うということになっています。(締切が延長されて3月末期限だったものが、9月末までの提出でOKとなりました。)

今は課税事業者ではないという大家さんの場合には、借主が免税事業者なのか、課税事業者なのかによって変わってきます。

借主が課税事業者の場合には、借主さんは「消費税分が経費にならないのなら、その分、値引きして」と思うかもしれません。更新の際などには「免税事業者の大家さんは嫌なので他の物件にします」という借主も出てくるかもしれません。インボイスの発行事業者になるかどうか検討した方がよいのかもしれません。

借主が免税事業者の場合には、借主も貸主も免税ですので、影響はないかもしれません。しかし、免税事業者の借主が課税事業者となる可能性もあります。

経過措置の話

インボイス制度は令和5年10月から始まる予定ですが、令和5年10月になったら免税事業者へ払った消費税相当額の全額が消費税計算上の経費とならなくなるわけではありません。

経過措置といって段階的に消費税計算上の経費となる額を減らしていきましょうというものがあります。現在の予定では下記のようになっています。

・令和5年10月1日から令和8年9月30日までは仕入税額相当額の80%

・令和8年10月1日から令和11年9月30日までは仕入税額相当額の50%

経過措置の期間が終わると、0円、つまり全額、消費税計算上の経費とならなくなります。

免税事業者がインボイスの登録をする場合

免税事業者である大家さんが、インボイス制度に対応するために登録をするという場合には、まず、課税事業者になる必要があります。

課税事業者になるということは、消費税を納税することになりますので、課税事業者になったらどれくらい納税が必要となるのかを把握しておいた方がよいと思います。

消費税の計算方法は2つあり、あらかじめ届出することで、どちらか選択することができます。

一つ目は本則課税という計算方法です。

こちらは、受け取った消費税相当額から、支払った消費税相当額を引いた差額を納税するというものとなります。

例えば110万円(税込)の事務所を貸し出したとします。そのうち10万円が受け取った消費税相当額となります。一方、管理費として11万円(税込)を支払ったとします。そのうち1万円が支払った消費税相当額となります。この場合10万円から1万円を引いた9万円が納税額となります。これが本則課税の考え方です。

2つ目は簡易課税という選択方法です。

簡易課税は、支払った消費税相当額を引くのではなく、受け取った消費税相当額のうち40%をひいて計算してよいというものになります。

例えば110万円(税込)の事務所を貸し出したとします。そのうち10万円が受け取った消費税相当額となります。その場合、40%の4万円を経費として引いてよいということになっていますので、10万円から4万円をひいた6万円が納税額をなります。

不動産賃貸業の場合には簡易課税を選択した方が納税額が少なくなるケースも多いともいわれています。

よって、課税事業者になる場合には、簡易課税を選択するかも検討した方が良いかもしれません。

簡易課税については制約もありますので、簡易課税を選択する前にはよく調べてから選択なさってください。

確定申告を税理士へ依頼している場合には、確定申告の際に、インボイスや簡易課税についても相談するとよいと思います。

 

支払先が適格請求書登録事業者かどうか確認する方法

ご自身が適格請求書登録事業者の登録をした場合には、消費税の計算方法を本則課税にしたときは、今度は支払先が適格請求書登録事業者かも考える必要が出てきます。

相手が会社(法人)であれば、適格請求書の登録番号は法人番号と同じ(厳密には法人番号の先頭にTをつけますが、検索サイトでは法人番号のみの入力でOKです。)ですので、国税庁「適格請求書発行事業者公表サイト」という検索サイトで登録されているかをチェックすることもできます。

しかし、相手が個人の場合には、ネット上では確認できませんので、本人へ聞くしかありません。もしも、「適格請求書発行事業者登録番号の通知のお願い」などを受け取ったことがあるのなら、それを真似して、支払先に送ってみるのがよいと思います。

なお、簡易課税を選択した場合には、支払先の登録状況は影響しませんので、気にする必要はありません。

インボイス(適格請求書)の発行の省略について

インボイス(適格請求書)発行の省略について記載します。

借主は消費税計算上の経費にするためには、原則として、取引相手(貸主)である登録事業者から交付を受けたインボイス(適格請求書)の保存等が必要となります。しかし、家賃の支払というのは、毎月請求書を発行していないというケースも多いと思います。

国税庁の公式サイト「適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)」の「お問合せの多いご質問(随時更新)」によると、

例えば、口座振替により家賃を支払っていて、不動産賃貸契約書あるが、請求書や領収書の交付はないという場合についての対応が記載されております。

その場合、「通常、契約書に基づき代金決済が行われ、取引の都度、請求書や領収書が交付されない取引であっても、仕入税額控除を受けるためには、原則として、適格請求書の保存が必要」であるとしながらも、

「適格請求書は、一定期間の取引をまとめて交付することもできますので、相手方(貸主)から一定期間の賃借料についての適格請求書の交付を受け、それを保存することによる対応も可能」としています。

また、「適格請求書の記載事項の一部(例えば、課税資産の譲渡等の年月日以外の事項)が記載された契約書とともに通帳(課税資産の譲渡等の年月日の事実を示すもの)を併せて保存することにより、仕入税額控除の要件を満たす」とも記載されております。

つまり、インボイス制度に対応した契約書や登録番号等の通知と、支払ったときの通帳のコピーや振込金受取書(振込明細書)等の保存により、毎月の請求書を発行しなくてもインボイス制度に対応できるようです。

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