作家・漫画家さん向け:インボイス登録するとどうなるのか

このページでは、作家さん、漫画家さん向けに、いわゆる「インボイスの登録」をするとどうなるのかについて記載していきます。

※令和4年9月22日、公表サイトからのデータダウンロードを一時的に停止したというニュースがありました。

9月27日時点では個人事業主分のインボイス登録番号のデータをダウンロードすると、以前記載されていた本名などの文字情報はなく、登録番号などの数字情報のみ記載となっています。しかし、情報を削りすぎたようにも思いますので、さらに修正が入るかもしれません。

令和5年3月29日に再開したようです。

なお、「登録番号の検索」画面での検索は、今まで通り、本名(公表を希望した場合には屋号や住所も)が表示されています。

まずは見てみる。国税庁のサイトからDL。

※令和4年9月22日以前に記載した内容となります。現在は変更されているようです。

適格請求書発行事業者登録(いわゆる「インボイスの登録」)を行った事業者の情報を公表しているサイトがあります。

国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」というもので、インボイス登録をした方の情報を誰でも入手できる国税庁の公式サイトとなります。

まずは、このサイトをみて、ご自身が登録した場合にどうなるのか見てみましょう。

右上に「ダウンロード Web-API」というタブがありますので、そちらをクリックし、「公表情報ダウンロード」をクリックしてみてください。全件データと差分データがありますが、差分データの方がデータが軽いですので、「差分データをダウンロード」、そしてデータの形式がいくつかありますので、CSVデータを選択して、中身を見てみてください。

※文字化けするかもしれません。そういった場合には、「文字化け CSV」などで検索すると解決方法が出てくると思います。(一旦、テキストファイルとして保存して、そこからエクセルファイルとして開く等。)

株式会社〇〇など、会社名が書かれている列があると思います。その列を下の方にいくと個人名が書かれているセルがあると思います。その方がインボイス登録をした個人事業の方と思われます。

名前のセルの左側に住所を載せている方も知れば。右側に屋号と思われるものを載せている方もいます。

住所や屋号の公表は任意、つまり公表するかしないかをあなたが選ぶことができます。

インボイス登録をすると、少なくとも名前とインボイスの登録番号(Tで始まる番号)はサイト上で公表されます。

なお、ここでいう名前とは税務署への申告書などに記載している名前となりますので、本名となります。

本名バレの話

本名バレの話も記載しておきます。

令和4年9月22日までは、データをダウンロードできました。

その中で、屋号の公表を申し出た場合には、本名の隣に屋号が記載されており、例えば、ダウンロードしたデータを開いて、屋号で検索かけると、本名がバレるということだったようです。

屋号を公表するためには、「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書」という書類を提出する必要があります。

ダウンロードしたデータをみると、屋号を公表している方は少ないようでしたし、公表しているのは、税理士などの士業や商店街などにありそうな店舗の経営者の方が多かったと思います。作家さんや漫画家さんが、わざわざ屋号を公表する必要はないように思いました。

なお、国税庁の公式サイトに、「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」というものがあり、その中で下記のような記載があります。

(屋号による記載)

問44 現在、当社は、請求書を交付する際に記載する名称について、屋号を使用しています。適格請求書に記載する名称も屋号で認められますか。 

【答】現行、請求書等に記載する名称については、例えば、請求書に電話番号を記載するなどし、請求書を交付する事業者を特定することができる場合、屋号や省略した名称などの記載でも差し支えありません。適格請求書に記載する名称についても同様に、例えば、電話番号を記載するなどし、適格請求書を交付する事業者を特定することができれば、屋号や省略した名称などの記載でも差し支えありません。

つまり、請求書で使うものは屋号でもよいという意味だと思います。

他方、「請求書やレシートに「屋号」を記載している個人事業者の皆さまへ」というものも公表されております。そこには、屋号を公表することで、あなたがインボイス(請求書やレシート)に記載した登録番号を、取引先が公表サイトで確認する際に、それがあなたのお店の登録番号なのかを確認しやすくなるということが書かれています。

つまり、請求書では屋号をつかってもよい。屋号を公表すれば、取引先が確認しやすくなるけれども、公表しなくても請求書で屋号を使ってもよいという意味だと思います。

このことからも、わざわざ屋号を公表する必要はないのではと思っています。

 

インボイスの登録番号は何に使うのか

インボイスの登録すると名前と登録番号が公表されることが分かりましたが、ではこの登録番号は何に使うのでしょうか。

この番号は、まず、売上先から聞かれたときに、伝えます。出版社などから、「適格請求書発行事業者登録番号のご通知とご依頼について」といった書類が届いた方もいるかもしれません。出版社側の番号をお伝えしますので、もしも登録済みであれば、あなたの番号を教えてください。といった内容となります。

インボイス制度がまだ始まっていませんので、登録番号の使い道は現時点ではこれくらいだと思います。

制度が始まりましたら、適格請求書(インボイス)、要するに登録番号を記載した請求書を売上先に渡すことなります。(自分用の控え(写し)を保存しておく必要があります。)

ただし、全ての売上先に渡すわけではありません。相手次第です。相手からインボイス(=適格請求書)欲しいですと言われた時だけ渡します。おそらく相手が大手出版社などの場合には渡すことになるでしょう。反対に「うちは要らないのよ」という出版社もあると思います。これは相手側の消費税の処理の問題でして、消費税の処理で経費にしたい場合にはインボイス(適格請求書)をもらうということになります。小規模の会社ですと消費税の課税事業者ではなかったり、簡易課税といって簡便的な方法で消費税の計算しているところもあり、そういったところはインボイスは要らないというのではないかと思います。

また、売上先が会社ではなく個人の場合には、適格請求書不要というケースが多いと思われます。

下記に取引ごとにインボイス(適格請求書)が必要なのかどうかの予想を記載してみました。※以下、インボイスというのは適格請求書のことと捉えてください。

  • 出版社向けの印税や原稿料
  • ダウンロード販売
  • 即売会での販売
  • 委託販売
  • アマゾンなどを利用した販売

出版社向けの印税や原稿料

出版社向けの印税や原稿料は、出版社の規模により、インボイスが要求されるか分かれるかもしれません。

大手出版社であれば、インボイスの登録をしたならば、インボイスくださいというところもありそうです。

元々印税については請求書がないということもあるようですので、インボイスへの対応について、そのうち、出版業界の指針みたいなものができるかもしれないと思っております。

小規模な出版社の中にはインボイス不要というところもあるかもしれません。

R5春、出版社の中には、方針が決まって、案内の書類が来ているところもあるようです。現行通りのところもあれば、インボイス登録しないと取引しないぞというところまで、対応はさまざまです。

出版社からの案内は捨てずに保管しておいた方がしばらくは良いかもしれません。

ダウンロード販売

ダウンロード販売の場合については、取引先のサイトをご確認ください。

2022年12月の時点では、DLサイトさんが、専用のページを作って、説明してくれています。そちらを読みますと、インボイス登録した場合、適格請求書(売上合計明細書)はDLサイト側で自動作成してくれて、売上金額も今まで通り入金してくれるということのようです。

また、インボイスの登録番号は、サークル(著作権者)とDLサイトとの間で使うもので、ユーザー(購入者)へ登録番号が渡るということは、なさそうだという印象を受けました。

他方、登録しない場合には、インボイス制度に合わせて、段階的に税込ベースの売上金額を減らしていきますということのようです。

即売会での販売

即売会での販売では、インボイスを求められることはまずないと思います。

いわゆる即売会での購入者は個人の消費者だと思います。インボイスを発行するのは、売上先が課税事業者の場合で、消費税の課税仕入れにしたいときですので、即売会で「インボイスください。」と言われたら、冷やかしかもしれません。

委託販売

委託販売しているという方もいるかもしれません。委託販売の場合も即売会と同じく、購入されるのは個人の消費者だと思いますので、インボイスを求められることは少ないかと思います。

インボイスを求められた場合、委託販売をしているときには、いくつか方法があり、その業者次第ですが、あなたの情報が請求書に記載されない方法もありそうです。

2023年7月末、虎の穴さんの対応が公表されました。インボイス番号の取得も報告も必要ないし、支払金額も変えないとのことでした。

ピクシブさんも対応が公表されました。

インボイス制度には「媒介者交付特例」というルールがあって、これに対応してくれる業者ですと、業者が請求書を発行してくれて、請求書には業者の情報のみが記載されるということになりそうです。つまり、あなたの情報は記載されないということです。

詳しくは、「媒介者交付特例」については国税庁の公式サイトをご覧ください。

 

アマゾンなどを利用した販売

アマゾンで売っていますという方もいるかもしれません。

アマゾンなどで売っている場合にも即売会と同じく、購入されるのは個人の消費者だと思いますので、インボイスを求められることは少ないかと思いますが、こういったすべてが自動化されていそうなシステムにおいて、購入者に求められた時だけインボイスが発行されるのか、毎回発行されるのかといったことは筆者には分かりませんでした。

なお、アマゾンのサイトの中によくある質問として、「インボイス制度導入(2023年10月1日開始)への対応について」というページがありましたので、そちらも参照ください。

法人化すれば名前は出ない?

個人事業の場合には、名前、つまり本名がサイトに公表されますが、会社にすると会社名と住所と登録番号が公表され、一見すると個人の名前は出ないように思えます。

しかし、会社は作るときに登記ということをします。登記とは国の台帳に必要な情報を登録することで、登記した情報は登記事項証明書(=登記簿謄本)を取得することでみることができます。そこには代表者の氏名や住所も記載されますので、インボイス登録で名前が公表されることの対策として、法人化する方はあまりいないかもしれません。

登記簿謄本と登記事項証明書の違いについては、松山地方法務局のサイトに記載がありますので、気になる方は参考になさってください。

まとめ

このページでは、作家さん、漫画家さん向けに、いわゆる「インボイスの登録」をするとどうなるのかについて記載していきました。

現時点(令和4年夏)では、まだまだ不明な点も多いですが、

インボイスの登録すると、すくなくとも名前と登録番号が公表されること、インボイス制度が始まったら、売上先から求められたら、必要事項(登録番号など)を記載した請求書を売上先に渡し、自分用の控え(写し)を保管しておくことになりそうです。