このページでは一般社団法人を設立しようか迷っている方に向けて、記載していこうと存じます。なお筆者は税理士でして、主に税金面からみたものとなっております。
一般社団法人の運営をされている方の中には、「組織を作りたいと思って、株式会社でも合同会社でも何でもよかったのだけど、一般社団法人を設立してみた」や「たまたま譲り受けたのが一般社団法人だったので運営している」という方から、「いわゆるNPOにするか一般社団法人に迷ったのだけど一般社団法人にした」という方や「公益法人化を目指してまずは一般社団法人を設立した」という方まで様々な方がいらっしゃるようです。
やりたい事業はあるのだけれども、一般社団法人にすればいいのか、株式会社にすればいいのか、いわゆるNPOにするのか迷っているという方の参考になりましたら幸いです。
「独立してやっていこう。」「自分の会社を持ちたい」という場合には、主に3つの組織といいますか、種類・形態があります。
一つ目は、株式会社。これは有名ですね。会社と言えば、まず思いつくのが株式会社ではないでしょうか。
二つ目は、合同会社。これは割と最近登場したものです。名刺を受け取って、〇〇合同会社とあったら、比較的歴史の浅い会社であることが多いかと存じます。株式会社よりも設立資金が安く済むという点も特徴の一つです。
そして三つ目は、一般社団法人です。「一般社団法人」と聞くと何か重々しい、公益性・共益性の高くて、非営利目的なものかなという印象を受ける方もいるかもしれません。しかし、登記をすれば設立できますので、株式会社や合同会社と同様に比較的簡単に設立できるものとなります。すべての一般社団法人がいわゆる非営利、利益を出さないという訳ではありません。大きな利益を出している一般社団法人も見かけます。いわゆる役員報酬や給与なども支払い可能です。(普通の会社(株式会社など)との違いのひとつは配当ができるかどうかという点ですが、そもそも中小企業は配当をしないことが多いですので、一般社団法人の運営をなさっている方でも配当できないという点について、気にしていない方も多いように感じます。)
なお、上記三つ以外にも、組織ではなく、個人事業主としてやっていく方法もあります。個人事業ではれば法務局への登記は必要ありません。わざわざ会社を作らなくても、事業を行う方法はありますので、独立=会社設立という訳ではないということは覚えておいていただきたいところです。
合同会社と株式会社、そして一般社団法人の共通点としては、いずれも法務局への登記(=登録)が必要という点が挙げられます。しかし、この登記の費用、それぞれで異なります。
最も安くできると言われているのが、合同会社となります。出来るだけお金をかけずに設立したかったから合同会社を選択したという経営者の方も多いようです。合同会社ですと、司法書士へ設立登記を依頼した場合でも10万円~15万円程度で手続きしてもらえることもあるようです。(司法書士報酬は、司法書士ごとに料金設定が異なりますので、どの司法書士に頼むかによって価格は変わります。)
続いて、株式会社。「資金調達などをお考えの方」や「会社を大きくしていこう」、「会社と言えば株式会社でしょう」という方が株式会社を選択しているようです。株式会社ですと少し料金が上がりまして、司法書士へ設立登記を依頼した場合、25万円~30万円程度で手続きしてもらえることもあるようです。(繰り返しとなりますが、司法書士報酬は、司法書士ごとに料金設定が異なりますので、どの司法書士に頼むかによって価格は変わります。)
最後に一般社団法人。動物関連や、スポーツ関連、技術関連などの事業内容の場合に一般社団法人を選択されている方が多いようにも思います。設立の際に、株式会社や合同会社と違う点のひとつは、社員と呼ばれる人が二人以上必要という点です。一人では設立できないので、誰か協力してくれる方を探すことになります。家族に協力してもらったり、知人を頼ったりと「もう一人の社員」になってくれる方探しにご苦労されている方もいるようです。
司法書士へ設立登記を依頼した場合、20万円程度で手続きしてもらえることもあるようです。(繰り返しとなりますが、司法書士報酬は、司法書士ごとに料金設定が異なりますので、どの司法書士に頼むかによって価格は変わります。)
※株式会社や合同会社などの会社の設立登記の費用は、自治体によっては補助が出るというところもあるようですので、ご自身の自治体でそういったサービスがないか探してみてはいかがでしょうか。
なお、司法書士を選ぶ上では、設立時の報酬だけでなく、その後のフォローもしてもらえる司法書士を選ぶことをお勧めします。会社関連の登記事項で特に多いトラブルは役員の重任登記の失念です。しっかりした司法書士に依頼すると、登記が必要な時に「もうすぐ登記が必要ですよ」と連絡をくれます。
ここからは法人税の話となりますが、営利目的でしたら、株式会社も合同会社も一般社団法人もどれでも法人税の計算上、普通法人という扱いとなり、同じ扱いとなります。
地方税の話になりますと、地方税には様々な税金がありますが、資本金や従業員数によって税額が変わる税金もあります。株式会社か合同会社か一般社団法人かという問題よりも、資本金の有無や資本金の額によって税額が変わるものがあります。
特に赤字の場合でもかかってくる均等割と呼ばれている税金があるのですが、そちらは資本金の額や従業員数によって税額が異なります。一般社団法人には資本金がありませんので、その場合には最低税率(東京都の場合には7万円)となります。
共益性の高い事業を行う場合には、NPO法人にするか一般社団法人にするか迷うという方もいるかもしれません。
NPO法人とは、特定非営利活動法人と記載されることもあります。また(特非)などと省略して表記されることもあります。
一般社団法人の設立は前述の通り、人が2人必要でして、その点が不便ですが、人が見つかれば、あとは登記をするだけで設立できます。
他方、NPO法人は10人は必要。そして、設立には審査が必要でして、設立するまでに半年程度かかるそうです。
すぐに設立したいという方は、一般社団法人の方がよさそうです。
なお、NPO法人から公益社団法人への移行はできないようですので、将来的に公益社団法人にしたいかもしれないという場合には、一般社団法人を設立した方が無難かもしれません。
NPO法人は、いわゆる登記費用はないようですが、審査がありますので、その書類を外部へ依頼すると25万円程度かかることもあるようです。
一般社団法人の設立は、司法書士へ設立登記を依頼した場合、20万円程度かかることがあるようです。
依頼する先によって料金は変わると思いますので、NPO法人も一般社団法人も設立コストは同じくらいと言えるのかもしれません。
税金面(法人税)では、一般社団法人の中で、非営利型法人の要件を満たしているかどうかによって変わってきます。
非営利型法人の要件を満たしている場合には、その法人の事業のうち収益事業からの所得(=利益)にのみ課税されることになります。要件を満たしていない場合には、通常の会社と同じようにすべての事業からの所得が対象となります。
※所得とは、いわゆる利益のようなものです。大雑把にいうと、会計の世界でいう利益のことを税金の世界で所得と呼んでいます。
NPO法人の場合には、法人税法上の収益事業を行う場合にはその部分の利益に課税されることになっています。
実際にNPO法人を設立・運営していく場合には、法人税法上の収益事業というものが掲げられておりますので、そちらをしっかりとご確認ください。
公益社団法人になるためには、まず一般社団法人を設立する必要があるようです。
ですから将来、公益社団法人化も視野に入れているという方は、一般社団法人を設立なさってはいかがでしょうか。なお、司法書士へ登記を依頼する場合には、設立の段階で公益社団法人を目指している旨、司法書士に伝えると公益社団法人化を見据えた登記内容にしてもらえるかと存じます。
なお、法人税の話をしますと、公益法人等として取り扱われ公益社団法人は、法人税法上の収益事業から生じた所得が課税対象となります。また公益目的事業は収益事業から除かれているため、公益目的事業から生じた所得は課税対象になりません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
最後に宣伝です。
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